2014年12月25日木曜日

人工心肺のトラブルシューティング1 -troubleshooting of cardiopulmonary bypass-

事例1

   完全体外循環中のメインの送血ポンプが停止した。

起きること→ポンプが止まれば、循環が止まることに等しい。
        常温の人工心肺の場合、2~3分で脳の器質的変化が起こり始める。

対処法→脳血回路の遮断を行う。ただし、遠心ポンプの場合、送血回路も遮断する。
      手動操作でポンプをまわす。
      循環を確保する。

原因→ローラポンプ:モーター部のベルトの断裂、異物の巻き込み
              過負荷によるモーターの加熱
     遠心ポンプ:ベッドの取り付けなど

完全体外循環中というのは、心臓が血液を送り出すというポンプの役目と、肺で酸素化されるという役目を全て体外で行ってる状態であるとも言える。
体から血液を抜くために、ローラポンプによる陰圧脱血と、落差による落差脱血の2種類があり、そのポンプが止まると、体に送血することができなくなり、血液を必要とする脳が最も最初に、ダメージを受けることになる。
対処方法としては、必ず人工心肺に取り付けられている、ハンドルを用いて、手動でポンプをまわすというやり方を行う。そうすることで、最低限の循環を確保する。その間に、パートナーに予備のポンプを持って来てもらう。ここでも、ポンプがどこにあるか、しっかりと整理しておく必要がある。
原因としては、ローラポンプのローラ部分に、負荷をかけすぎたために生じる加熱や異物の巻き込みによる停止や、遠心ポンプでは、インペラ部分の加熱によって蛋白変性することで停止などが考えられる。


事例2

   大量の気泡の送り込みが発生した。

起きること→全身レベルでの空気塞栓となる。
        特に脳梗塞のの危険性が高い。

対処法→少量の場合:ポンプを停止せず、流量を少なくしながら、体内に吸収させる。
      大量の場合:体位で頭を低く、足も低くする。
               頭を揺らさして上に気泡を移す。
               低体温にする。センサーをつける。
               逆行性の送血

原因→センサを付けない、亀裂がチューブにあった。


体外循環を行う上で、最も重要なことは空気を送らないことである。それは、もちろん人工心肺のみならず透析などでも同様である。もともと、体を流れる血管内に空気が入ることなどないので、血液を体外へ出して戻す体外循環中に空気が入り、体の中に送ってしまえば、体にとんでもない異常が現れてしまう。特に脳は酸素がなければならない上に、血管が細く、空気塞栓を起こす可能性があるため注意しなければならない。
対処方法として、もし空気を送ってしまった場合は、脳に送ることだけは阻止しなければならないので、空気は高い方へ移動することを利用して、頭と足を下にし、逆行性の送血を行うという手段をとる。
この事故は、リザーバーが空になったことに気付かずに送血を続けることで起こるため、リザーバーの血液レベルが一定レベルまで低下したら、警報がなる装置の取り付けが急務となっている。

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